[痛風の本]ベルツ日本再訪〜ドイツに戻ってからの「ベルツの日記」

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◎ベルツ日本再訪 草津・ビーティヒハイム遺稿/日記篇
エルヴィン・ベルツ著/若林操子 監修/池上弘子 訳/東海大学出版会/2000年/¥4,500+税


明治時代初期にお雇い教師としてドイツより招かれ、日本近代医学の発展に大きく貢献したエルウィン・ベルツ。ベルツは来日した際、欧米ではポピュラーであった痛風が「日本にはない」と述べて、そのことは痛風関連の書物やサイトなどでよく取り上げられています。しかし『ベルツの日記』『ベルツ日本文化論集』にはそのことが書かれていませんでした。ベルツは本当にそんなことを述べたのでしょうか?
と、いうことで、しつこくベルツの本を調べます。次は『ベルツ日本再訪』です。

ベルツは日本では「近代医学の父」として知られていますが、日本での役目を終え、ドイツに戻ってからは医療に関わることなく、文化人類学者として論文を書き、学会に出席し、講演を行いました。日本人の知らないベルツのもうひとつの顔です。『ベルツ日本再訪』は、ベルツが日本滞在の29年間を記録した『ベルツの日記』の続きにあたるもので、日本を去って以降、ドイツ国内を始め、ベルツが巡った世界各国の旅行記、といった風情があります。

読む前に気付くべきでした。日本を去ってからのことなら「日本に痛風はない」の記述は期待できません。それは来日当初に述べられたことでしょうから。そしてこの本は『ベルツ日本文化論集』と同じくとても分厚い本です。とてもじゃないですが読み通す自信はありません。結局これもまた全部は読みませんでした…申し訳ない。
この本には『ベルツ日本文化論集』のような語句の索引は付いていなかったので、それぞれの目次で「痛風」があるかないかの見当を付けてみましたが、それらしい部分はなさそうでした。全部読んでいないのでわかりませんが。せめて『日本再訪』の部分は読みましたが、そんなことには触れてもいません。やはりないようです。

この本で、よく載せたなあと思ったのは「エラ」についての日記です。エラとは、ベルツが後に妻にする日本人女性ハナの前に出会った女性のことで、エラも日本人ですが、ベルツはそう呼んだそうです。エラは当時多くの単身外国人が雇い入れたという「ムスメ」でした。つまり金銭で契約する愛人だったのです。しかしベルツはエラを単なる愛人として扱わず、ひとりの女性として受け入れ、エラもベルツに心を開き、幸せな関係を築きます。が、その関係はエラの裏切りによって崩れ去るのです。
肉親が公開を躊躇したであろうこの生な日記は、いかなる立場の人に対しても誠実であろうとするベルツの人間性を描き出します。メロドラマでもこんな展開はないだろう、と思えるほどの愁嘆場には心が痛みます。これはまさに埋もれた資料で、この本に携わった皆さまが、この部分を収めることを決断されたことで日の目を見、我々一般人も読めるようになったのです。覗き見的な意味ではなく、それはとても価値のあることだなあと思うのです。
私はベルツの書いたものを斜めにしか読んでいませんが、もうかなりベルツのファンです。

しかし「日本には痛風がない」は出てきませんね…どこにあるのでしょうか?

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