尿酸値が7.0mg/dL以上の状態を「高尿酸血症」といいます。高尿酸血症を治療する目的としては、①痛風関節炎や腎障害などの尿酸塩沈着症を回避し、②合併症(肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常症など)を防ぐ、ということが挙げられます。
高尿酸血症ではあっても、痛風発作が起こらず、特に自覚症状のない病態を「無症候性高尿酸血症」といいます。日本では無症候性高尿酸血症の患者に対しても薬物治療を行いますが、欧米では痛風関節炎か痛風結節が現れない限り、基本的に薬物治療は行いません。ただ欧米では日本に比べて痛風結節のある重症な痛風患者が多く、日本の治療基準に沿ったほうが痛風の予防にはより効果があると言えます。
高尿酸血症の薬物治療は、
・痛風発作、痛風結節の有無
・合併症の有無
によって治療方針が異なります。
◎尿酸値が7.0mg/dL超〜8.0mg/dL未満の場合
・痛風発作、痛風結節の経験がない人…生活習慣の改善
・ 〃 ある人…薬物治療を行う
◎尿酸値が8.0mg/dL以上〜9.0mg/dL未満の場合
・痛風発作、痛風結節、合併症がない人…生活習慣の改善
・ 〃 ある人…薬物治療を行う
◎尿酸値が9.0mg/dL以上の人
・薬物治療を行う
高カロリー高タンパク食品の過食、お酒の飲み過ぎ、運動不足などの生活習慣は高尿酸血症の原因となるばかりでなく、肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常、メタボリックシンドロームなどとの合併症をもたらします。薬物治療の前に生活改善を行うことが重要です。
すでに痛風発作、痛風結節、合併症が見られる場合、生活改善だけでは体内に蓄積した尿酸を解消することは難しいので、薬物治療を行います。その場合、尿酸値を6.0mg/dL以下に維持することを目標にします。痛風発作の再発は尿酸値が6.0mg/dL以下になると起こりにくくなるからです。
【参照】
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版[2012年追補版]』 第3章 高尿酸血症・痛風の治療 2高尿酸血症の治療 1治療目標〈p79-82〉(日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改訂委員会 編集/メディカルレビュー社/2012年)
『最新醫學別冊 診断と治療のABC 105 高尿酸血症・痛風』 第4章 管理・治療 高尿酸血症の管理・治療 ー治療対象と薬物の選択基準ー〈p134-140〉(寺井千尋 企画/最新医学社/2015年)