高尿酸血症の静かなる進行
痛風がおきるまでの順番をごく簡単にいいますと、
尿酸が増える→高尿酸血症になる→痛風発作がおきる
という流れになります。簡単すぎますか?
痛風のベースには必ず高尿酸血症という病気があります。高尿酸血症とは尿酸の血液中の濃度=尿酸値が7.0mg/dL以上の状態のことをいいます。
尿酸は血液に溶けにくいものなので、尿酸値が7.0mg/dLをこえると飽和状態になり結晶化がはじまり、尿酸塩結晶というものになります。これが徐々に関節や腎臓にたまり、痛風などの病気につながるのですが、その段階ではとくに自覚症状がありません。この自覚がない段階を「無症候性(むしょうこうせい)高尿酸血症期」といいます。高尿酸血症にも段階があって、3つに分かれます。
①無症候性高尿酸血症期
②急性痛風発作期
③慢性結節性痛風期
の3段階です。
①無症候性高尿酸血症期
尿酸値は7.0mg/dLを超えていますが、特に自覚症状がない状態をいいます。
尿酸値はいくら高くなっても自覚症状が出ないところが怖いのですが、健康診断の血液検査などでチェックすればわかります。私の場合は何も知らずにいきなり痛風がおこって無理やり気づかされたので、そういうわかり方もあるかと存じます。
尿酸値が高いことがわかれば「自覚症状はないし痛くも痒くもないし」といって放置せず、少なくとも生活改善の意識くらいは持ち始めるべきでしょう。でないと痛風は本気で痛いですし、ほかの病気につながる可能性もありますし、いいことないです。
②急性痛風発作期
痛風はほぼ前触れなく突然おきるのでびっくりさせられます。痛みは強烈ですが、それ自体は1週間〜10日ほどでおさまってしまいます。しかし、おさまったからといって根本的に治ったわけではありません。生活の改善や薬物治療を行わず高尿酸血症を放置した場合、痛風を再発する可能性はとても高くなります。
痛風が再発するまでの間は個人差があって数ヶ月〜数年と幅がありますが、治療を行わないとその間隔はだんだん短くなっていき、そのつど激痛がおこります。
この痛風発作がおこってから再発をくりかえす期間のことを「急性痛風発作期」といいます。この段階では増えすぎた尿酸の影響で「尿路結石」や「腎障害」などの合併症がおきやすくなります。
③慢性結節性痛風期
さらに治療を行わないままでいると、痛風が進行して関節の痛みなどが慢性化します。この段階を「慢性結節性痛風期」といいます。
今ではよい薬もあるので慢性化させる人は少ないのですが、この段階にくると「痛風結節(つうふうけっせつ)」ができるようになります。痛風結節とは尿酸塩を中心とした肉芽(にくが)組織、つまり「コブ」で、耳介(耳の外側)、足の関節、ひじ、ひざ、あらゆるところにできます。ほかにもこの時期には「痛風腎」「高血圧症」「脂質異常症」などすでに合併症がおきている可能性があります。
ちゃんとしたデータはないそうですが、高尿酸血症から痛風になる人は約1割程度といわれています。尿酸値7.0mg/dL超えてて高尿酸血症だけど、1割ならあんまり気にしなくてもいいかと思ったアナタ!高尿酸血症は痛風だけでなく、ほかの合併症ももたらすので油断は大敵ですよ。
次の「痛風・高尿酸血症の合併症①」から、その合併症についてまとめていきたいと思います。
ここで一句。
(ゆるめに長くがいいのです)
【参照】
『患者のための最新医学 痛風・高尿酸血症』(日高雄二 監修/高橋書店/2014年)
『図解 痛風・高尿酸血症を治す! 最新治療と正しい知識』(谷口敦夫 監修/日東書院/2015年)
『ウルトラ図解 高尿酸血症・痛風』(細谷龍男 監修/法研/2015年)