痛風がぜいたく病と言われるわけ
痛風をいちばん最初に医学的に観察して記録したのは「医学の父」ヒポクラテス(BC460〜377年頃)です。
紀元前の頃から痛風は、西洋においてすでにポピュラーな病気でした(上流階級の人たちに限って、ですが)。
ヒポクラテス以降、歴史上に名を残した人物で痛風に苦しんだ人はたくさんいたようで、痛風関係の本にはよくそんなことが書かれています。
なので、ためしに並べてみました。
アレクサンダー大王 | マケドニア王国 | BC356-323 | |
カール大帝 | フランク王国 | 742-814 | |
フビライ・ハン | モンゴル帝国皇帝 | 1215-1294 | |
マルコー・ポーロ | ヴェネツィア | 1254-1324 | 商人・冒険家 |
ダンテ | イタリア | 1265-1321 | 詩人 |
レオナルド・ダ・ヴィンチ | イタリア | 1452-1519 | 芸術家 |
ヘンリー7世 | イングランド王 | 1457-1509 | |
ミケランジェロ | イタリア | 1475-1564 | 芸術家 |
マルチン・ルター | ドイツ | 1483-1546 | 宗教改革 |
ヘンリー8世 | イングランド王 | 1491-1574 | |
カール5世 | 神聖ローマ皇帝 | 1500-1558 | |
フェリペ2世 | スペイン国王 | 1527-1598 | |
フランシス・ベーコン | イギリス | 1561-1626 | 哲学者 |
ジェームス1世 | イングランド王 | 1566-1625 | |
ウイリアム・ハーヴェイ | イングランド | 1578-1657 | 医師 |
クロムウェル | イングランド | 1599-1658 | 政治家 |
ミルトン | イギリス | 1608-1674 | 詩人 |
ルイ14世 | フランス国王 | 1638-1715 | |
ニュートン | イングランド | 1642-1727 | 科学者 |
アン女王 | イギリス | 1665-1724 | |
ベンジャミン・フランクリン | アメリカ | 1706-1790 | 政治家・科学者 |
ピット | イギリス | 1708-1778 | 政治家 |
フリードリヒ大王 | プロイセン王 | 1712-1786 | |
ゲーテ | ドイツ | 1749-1832 | 作家 |
ハミルトン | アメリカ | 1755-1804 | 政治家 |
ジョージ4世 | イギリス国王 | 1762-1830 | |
スタンダール | フランス | 1783-1842 | 作家 |
ダーウィン | イギリス | 1809-1882 | 生物学者 |
モーパッサン | フランス | 1850-1893 | 作家 |
チャーチル | イギリス | 1874-1965 | 政治家 |
たくさんいらっしゃいます。皆さん痛風持ちです。
王侯貴族政治家資産家思想家芸術家…痛風になるのは、よい食べ物と酒をたくさん口にできる上流階級の人々だったので、痛風は「帝王病」とか「ぜいたく病」みたいに言われました。高タンパク高カロリーのセレブな食生活を続ける人が痛風にかかることが一般的に知られていたのです。
美食が過ぎると痛風になる、というイメージは今も続いているような気がします。本当はもうそんなことはなくて、今や一般庶民の病気なのですが、はたしてそれは喜ぶべきか悲しむべきか…
ところで上の英雄リストの中で東洋人は、フビライ・ハンただひとりです。西洋ではよく見られた痛風は、東洋ではとても稀な病気でした。
それは食生活が低タンパク、低カロリーなものが主で、肉食中心の西洋に比べて質素なものだったからです。
ではここで一句。
(困ったものです)
【参考】
『痛風のすべて ー歴史から食事療法までー』〈p10-13〉(加賀美年秀 著/メディカル トリビューン/1988年)
『痛風とつきあう法』〈p18-20〉(山中寿 著/東京新聞出版局/1998年)
『痛風 発作を起こさないための尿酸コントロール』〈p17-18〉(巌琢也 著/新星出版社/1999年)
『やさしい痛風・高尿酸血症』〈p108-110〉(西田琇太郎 著/日本医事新報社/第1版 1984年/第2版 2001年)
『痛風はビールを飲みながらでも治る!』〈p32-33〉(納光弘 著/小学館/2004年)
『患者のための最新医学 痛風・高尿酸血症』〈p54〉(日高雄二 監修/高橋書店/2014年)
『図解 痛風・高尿酸血症を治す! 最新治療と正しい知識』〈p58〉(谷口敦夫 監修/日東書院/2015年)
『最新醫學別冊 診断と治療のABC 105 高尿酸血症・痛風』〈p13〉(寺井千尋 企画/最新医学社/2015年)