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痛風になりやすい人〜性別・年齢・性格・遺伝
痛風にかかる人にはある一定の傾向があります。性別、年齢、性格、遺伝などと、痛風との関係をまとめます。
痛風にかかるのは男性が98.5%、女性は1.5%
痛風にかかる98.5%は男性です。一方女性の痛風は全体の1.5%ほどにしかなりません。女性は男性に比べて痛風の原因となる尿酸の量がもともと少ないからです。それは、エストロゲンという女性ホルモンが尿酸を排泄させやすくしているからだといわれています。
ただ、女性も閉経後は女性ホルモンの分泌が下がるので、尿酸値が上がって痛風になる可能性が高くなります。
痛風の発症年齢は30歳代が最も多く、生涯の罹患リスクは5%
近年の日本では初めて痛風にかかる年齢層が低くなっていて、30歳代が最も多くなっています。
中学3年生男子の15%がすでに高尿酸血症だとの報告もあり、若年齢化の傾向は進んでいます。30歳代男性での高尿酸血症は30%になり、日本人男性全体でもそれと同等の30%とみられています。
そして生涯のうち痛風にかかる男性は、少なくとも5%以上になると考えられています。
痛風になりやすい性格 〜 タイプA行動パターン
「タイプA行動パターン」とは1959年にアメリカの医師フリードマンとローゼンマンが心臓病になりやすい性格として定義したもので、この性格分類は痛風患者にもあてはまるとされています。その性格とは、
・積極的、行動的で責任感が強く、指導力がある
・負けずぎらいで競争心、上昇志向、成功願望が強い
・周囲に攻撃的で敵対心、自己主張が強い
・まじめ、せっかち、几帳面
というものです。つまりタイプA行動パターンの人は、強いストレスを受けやすい人であるといえます。「尿酸増加の原因:補足」に書いた通り、ストレスは体内の尿酸を増加させて、痛風になる確率を押し上げます。
このタイプA行動パターンの人は経営者や指導者の立場の人に多く、「偉人たちの痛風」にまとめたように、その昔痛風にかかった人たちの性格にも当てはまるのかもしれません。
痛風と遺伝子の関係 〜 尿酸トランスポーターABCG2
痛風・高尿酸血症に関わる遺伝子のひとつに「尿酸トランスポーターABCG2」というものがあります。「トランスポーター」とは細胞膜などを通過して物質を運ぶ機能を持った膜タンパク質の一種です。
尿酸は、尿酸トランスポーターABCG2がないと細胞膜を通ることができません。尿酸トランスポーターABCG2は、尿酸を体の外に排泄させるために必要な遺伝子なのです。この遺伝子に変異がおきて機能が低下すると、尿酸が細胞膜を通過する量が減り、尿酸が排泄されず、尿酸値が上がります。
この尿酸トランスポーターABCG2は、腎臓、肝臓、腸管などいくつかの組織で働いていますが、とくに腸管での影響が大きくなります。
尿酸の排泄は主に腎臓で2/3、腸管で1/3が行なわれます。尿酸トランスポーターABCG2の機能が低下した場合、腎臓、腸管の両方で尿酸の排泄量が減って、体内の尿酸量が増えます。
腎臓は別の方法でも尿酸を排泄することができますが、腸管ではそれができません。腎臓はがんばって腸管の分も排泄しようとするので、尿の中の尿酸量は増えますが、体内に増えた余分な尿酸を全て排泄するまでには至りません。つまり尿酸値は高いままで、これが痛風の発症につながります。
痛風はこのように、受け継がれた遺伝子からくる尿酸が増えやすいという体質と、普段の生活習慣とが重なっておこると考えられます。
そのほかの要因
「尿酸増加の原因:補足」のページなどでも触れましたが、尿酸値を上げるような生活習慣の人は、当然ながら痛風にかかりやすくなります。
・内臓脂肪型肥満である 〜 高タンパク、高カロリー、高脂肪の食品を好む
・お酒をよく飲む
・激しい運動をする
こういう生活習慣の人は、痛風のみならず、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクが高まります。
【参考】
『患者のための最新医学 痛風・高尿酸血症』(日高雄二 監修/高橋書店/2014年)
『ウルトラ図解 高尿酸血症・痛風』(細谷龍男 監修/法研/2015年)
『最新醫學別冊 診断と治療のABC 105 高尿酸血症・痛風』(寺井千尋 企画/最新医学社/2015年)
『とうやく396号(2013年1月号)学術欄』 痛風・高尿酸血症研究における最近の進歩 ―新しい高尿酸血症発症メカニズムについて―(東京薬科大学薬学部 病態生理学教室 教授 市田公美/一般社団法人 東京薬科大学同窓会 東薬会)
ウィキペディア『膜輸送体』