痛風・高尿酸血症について、どのような検査が行われ、どう診断が下されるのかをまとめてみたいと思います。
目次
痛風になったとき、何科に行けばいいのか?
痛風にかかったとき、痛風を専門に診察してくれる病院があります。ネットにも情報が上がっています。
◎公益財団法人 痛風財団
◎病院なび
「痛風」を看板に掲げている病院はそんなに多くはなくて、痛風の専門医といってもいろいろな科があります。一般的に何科へ行けばいいのかというと、
外科…整形外科
と、なります。近くにこれらの科があればそこへいきましょう。もしくはかかりつけ医で受診して、そこで専門医を紹介してもらいましょう。
痛風がおこったときの問診
足に激痛がおこり、痛風だと思って病院へ行ったとき、まずそれが本当に痛風かどうかを確かめなければなりません。そこで最初に行われるのが問診です。そこではこんなことが聞かれます。
・前の発作からの間隔
・いつ発作がおこったか
・体のどこに発作がおこったか
・どれくらい痛いか
・痛みはどれくらい続いているか
・血尿はあるか
・腰痛はあるか
・痛風以外の病気(高血圧、糖尿病、腎臓病)はあるか
・服用している薬はあるか
・家族に痛風にかかったものがいるか
・食習慣、飲酒、生活環境
・体重とその変動
これらの質問は、その症状が痛風かどうか、また、ほかの病気が併発していないかどうか、そしてその後の治療方針を決めるための最初の手がかりになります。
血液検査
尿酸値を調べる
尿酸値とは正確には「血清尿酸値」のことで、血液を自動分析器にかけて血清を分離し、血清の中の尿酸の量を測ったものをいいます。1dL(デシリットル)中に尿酸が何mg(ミリグラム)あるかを表しています。
尿酸値は1日の内でも変化します。朝は高く、夜には低くなり、運動や食事内容、飲酒やストレスなどによっても変動します。ごくごくわずかですが測定する機器の誤差もあります。
より正確な尿酸値を測るためには、日を変えて同じ時間に何回か測定し、その平均をとります。その値が7.0mg/dL以上であれば高尿酸血症と診断されます。
痛風発作がおこった直後は尿酸値が下がることがあります。その場合は日をおいて正確な尿酸値を調べます。
尿素窒素(BUN)、クレアチニン値を調べる
「尿素窒素」はたんぱく質が分解されてできる老廃物で、「クレアチニン」は筋肉のエネルギーになるクレアチンが分解されてできる老廃物です。血液中にこれらの老廃物が増えているということは、腎臓が老廃物をちゃんと処理していないということで、腎臓の機能が低下していることを意味します。
尿検査
痛風・高尿酸血症のひとは腎臓に障害をおこしている場合があるので、尿検査でもそれを確認します。
腎機能が低下していると、尿たんぱくがでます。また、痛風・高尿酸血症の患者は尿が酸性になりやすく、酸性度が高いほど尿酸は尿に溶けにくくなります。つまりその場合、尿路結石ができやすくなります。尿に血が混じっているときは、すでに結石ができている可能性があります。
尿酸クリアランス検査
痛風・高尿酸血症は尿酸の増え方によって「尿酸酸性過剰型」「尿酸排泄低下型」「混合型」の3つのタイプに分けられています。どのタイプで尿酸が増えているのかを確かめるためには「尿酸クリアランス検査」を行います。「クリアランス」とは血液から物質をこし取る能力のことで、つまり尿酸クリアランス検査とは腎臓が尿酸を濾過する能力を調べることです。
尿酸クリアランスの数値は簡単にいうと、60分間の尿を採取して、その中に含まれる尿酸などの物質の量をはかり、得られたデータをある数式に当てはめて算出します。算出された数値でタイプを判定し、その後の治療方針を決めるわけです。
ただ近年、上の3つのタイプ以外に腸からの尿酸排泄が低下する「腎外排泄低下型」という別のタイプがあることがわかっています。その場合でも尿酸クリアランス検査が有効なのかどうか、私にはよくわかりません。しかしおそらく、腎臓機能のみに着目した今までの検査は今後修正が加わるのではないかと想像しています。
ちなみに私は痛風外来で尿酸クリアランス検査をやってもらえず、少し残念な気持ちになりました。でももしかしたら担当の先生が「腎外排泄低下型」のことを見越して「やってもムダ!」という判断だったのかも…しれません。そもそも一般的に行われている検査なのでしょうか? アンケートでもとりたいところです。
エコー(超音波)検査
腎臓に尿酸塩結晶の沈着や、結石ができていないかを調べます。また、関節に尿酸塩結晶が沈着しているかどうかも調べることができます。
レントゲン検査・CT検査
レントゲン撮影、CTスキャン両方ともX線による検査です。痛風の幹部をレントゲン撮影し、関節に変形がないかどうか調べます。また、あまり行われないようですが、腎臓をCTスキャンして結石の有無などを調べることもあります。ちなみに私はCT検査を行い、腎臓に大きな結石を確認しました。なんでもやってみるものです。
関節液検査
痛みが膝などにおこった場合、痛風と断定しにくい場合は「関節液検査」を行えば確実です。患部の関節に注射針を刺して関節液を採取し、そこに尿酸塩結晶があれば、痛風と判定されます。しかし、ただでさえ痛いところに注射針を刺すのは患者にとって非常に苦痛なので、あまり行われることはないようです。
痛風結節の生検
痛風結節とは、尿酸塩結晶が皮膚の下にたまってできるコブのことです。痛風結節と思われるコブがある場合、そのコブの組織を採取して生検を行います。生検とは生体から検体(血液、尿、体の組織の一部など)をとって行う検査のことです。
コブから採取した組織が尿酸塩結晶であれば、痛風と判断されます。
アメリカ・リウマチ学会の痛風の診断基準
痛風とほかの病気を見分けるために、アメリカのリウマチ学会が1977年に定めた診断基準がよく使われます。それは以下のようなものです。
1. 尿酸塩結晶が関節液中に存在する
2. 痛風結節の証明
3. 以下の項目のうち6項目以上を満たす
a. 2回以上痛風発作をおこしている
b. 24時間以内に炎症がピークに達する
c. 1ヶ所のみの炎症(単関節炎)である
d. 関節が赤く腫れる
e. 足親指の付け根に痛みまたは腫れがある
f. 片側の足親指の付け根に病変がある
g. 片側の足首に病変がある
h. 痛風結節(確診または疑診)がある
i. 血清尿酸値の上昇がある
j. X線検査で非対称の腫れがわかる
k. 発作が完全におさまる
1.または2.であれば痛風と診断されますが、1.の場合、発作中に患部へ注射針を刺して関節液を採取しなければならず、それは苦痛をともなうのであまり行われません。2.について、痛風結節は痛風患者のすべてにできるわけではなく、特に最初の痛風発作ではほぼ見られません。よって、よく使われるのは3.で、その内の6つが当てはまれば痛風と診断されます。