尿酸増加の原因:補足

サンマ01
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尿酸増加の原因:補足・詳細

痛風は体内の尿酸が増えるとおこります。尿酸が増える理由を「尿酸増加のタイプと原因 」で【尿酸産生過剰型】【尿酸排泄低下型】にわけてそれぞれまとめましたが、少し原因の補足をします。

食品のプリン体の過剰摂取

尿酸のもとになるプリン体を多く含む食品を過剰に連続して食べた場合、尿酸値が上がる原因になります。しかし、「食品中のプリン体は尿酸値に影響しない」でもまとめましたが、大量に食べなければさほど気にする必要はないとされています。

プリン体はそもそも生命維持のために必要不可欠のもので、絶えず体の中で作られています。一方食品から摂取されるプリン体の割合は全体の2割程度にすぎず、しかもその多くは腸から排泄されるので、尿酸値にあまり影響しないのです。

なので私はいわしの干物でも何でもばくばく食べてます。おいしいです。

肥満

紀元前のころから栄養状態がよくて肥満がちな人が痛風になりやすいことは経験的にわかっていましたが、どんなメカニズムで肥満が痛風につながるのでしょうか?

それは、ざっとですが、

食物の過剰摂取→肥満→内臓脂肪が増える→遊離脂肪酸増加→肝臓で代謝→中性脂肪の合成が活発化するとともに尿酸産生促進→尿酸値が上がる 【尿酸産生過剰】

ということになります。「遊離脂肪酸」とは脂肪細胞から中性脂肪が分解されて血中に溶け出したもので、エネルギーとして使われます。さらに、

食物の過剰摂取→肥満→内臓脂肪が増える→インスリン抵抗性が増大→高インスリン血症→尿酸の体内への再吸収増加→尿酸の排泄低下→尿酸値が上がる 【尿酸排泄低下】

ということも体の中でおこっています。「インスリン」とは体内ホルモンのひとつで、ブドウ糖(血糖)を臓器細胞に取り込むなどの働きをして血糖値を下げます。「インスリン抵抗性」とは、そのインスリンが正常に働かなくなる状態のことです。

このように肥満は尿酸の産生増加と排泄低下の両方をもたらしますが、そのメカニズムはまだ完全にはわかっていません。いずれにせよ肥満の影響は非常に大きい、ということに間違いはありません。

過度の飲酒

お酒に含まれるプリン体については、上記のとおり、あまり気にしないことにします。むしろ、過度の飲酒は尿酸の産生増加と排泄低下をダブルでもたらすので、そっちのほうが問題です。

アルコールの摂取→アルコールの代謝→アデニンヌクレオチドの分解促進→尿酸増加→尿酸値が上がる 【尿酸産生過剰】

アデニンヌクレオチドとはプリン体の一種です。加えて、

アルコールの摂取→血中の乳酸の増加→尿酸の体内への再吸収増加→尿酸の排泄低下→尿酸値が上がる 【尿酸排泄低下】

ということで過度の飲酒は【混合型】のダブルで尿酸値を上げるのです。やはりお酒はホドホドにしないとダメなようです。ちなみにホドホドとされるお酒の量は、

ビールなら  …500ml(中びん1本)
日本酒なら  …180ml(1合)
焼酎なら   …  90ml(1/2合)
ワインなら  …200ml(グラス2杯)
ウイスキーなら…  60ml(シングル2杯)

です。決して全部合わせた量ではありません。これではもの足りないなあと思った方、自制しましょう。

激しい筋肉運動

体を動かす時に使われるエネルギー物質に「ATP(アデノシン三リン酸)」というものがあります。これにはプリン体が含まれます。
ATPはエネルギーとして利用されるといったん分解されますが、通常は再びもとに戻ります。
ただ、激しい運動で急激に大量にATPが使われたときは、プリン体から尿酸へと分解されるので尿酸値が上がります。

激しい運動とは、筋力トレーニングや短距離走など酸素をほとんど取り込まない「無酸素運動」のことをいいます。

激しい運動(無酸素運動)→エネルギーATP代謝→プリン体放出・分解→尿酸増加→尿酸値が上がる 【尿酸産生過剰】

強い精神的ストレス

ストレスが尿酸を増加させるということは、科学的に解明されていないそうなのですが、そこには「自律神経」が関係しているとみられています。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、人が活動中に働くのが交感神経、休んでいるときに働くのが副交感神経です。強いストレスを受けると、

ストレス→交感神経が働く→緊張状態→エネルギーの消費→プリン体の代謝→尿酸増加→尿酸値が上がる 【尿酸産生過剰】

ということがおこると考えられています。また、

ストレス→血管の収縮→腎臓内の血液量減少→腎臓機能の低下→尿量減少→尿酸の排泄低下→尿酸値が上がる 【尿酸排泄低下】

という形でもストレスが影響するとみられています。

他の病気

他の病気や薬剤の副作用によって尿酸値が高くなる状態を「二次性(続発性)高尿酸血症・痛風」といいます。二次性痛風は全体の5%ほどです。以下羅列します。

【産生過剰】
◎遺伝性代謝性疾患
・レッシュ・ナイハン症候群
・ホスホリボシルピロリン酸合成酵素亢進症
・先天性筋原性高尿酸血症
◎細胞増殖の亢進・組織破壊の亢進
・悪性腫瘍(造血器腫瘍、固形腫瘍)
・非腫瘍性疾患(尋常性乾癬、二次性多血症、溶血性貧血)
・腫瘍溶解症候群
・横紋筋融解症
◎甲状腺機能低下症

【排泄低下】
◎腎疾患
・慢性腎疾患
・多発性嚢胞腎
・鉛中毒・鉛腎症
・ダウン症候群
・家族性若年性痛風腎症
◎代謝、内分泌性
・高乳酸血症 など

【混合型】
◎1型糖原病
◎妊娠高血圧症候群
◎広範な外傷・熱傷
◎ニコチン酸、ニコチン酸アミド

薬剤の副作用

薬剤の副作用による尿酸増加も二次生高尿酸血症・痛風です。

【産生過剰】
・好悪性腫瘍薬(抗がん剤)
・ミゾリビン(プリン拮抗薬)
・テオフィリン(気管支拡張薬)
・フルクトース、キシリトール(輸液・栄養製剤)

【排泄低下】
・利尿薬(フロセミド、サイアザイド系利尿薬、D-マンニトール)
・少量のサリチル酸
・抗結核薬(ピラジナミド、エタンブトール塩酸塩)
・免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス水和物)

尿酸と抗酸化作用
尿酸と抗酸化作用
尿酸の重要な役割 〜 抗酸化作用 痛風は体内で尿酸が増えて、尿酸値7.0mg/dL以上の状態が長期間続くとおこります。尿酸はそれ以上体内で...

【参照】
『最新醫學別冊 診断と治療のABC 105 高尿酸血症・痛風』(寺井千尋 企画/最新医学社/2015年)
『患者のための最新医学 痛風・高尿酸血症』(日高雄二 監修/高橋書店/2014年)
『ウルトラ図解 高尿酸血症・痛風』(細谷龍男 監修/法研/2015年)

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