尿酸が増える3つのタイプ
プリン体は体内で絶えず分解され、尿酸がつくられ続けます。では尿酸は増える一方かというとそうではなくて、絶えず排泄もされています。
人の体内にはいつも一定の量、約1,200mgの尿酸があります。1日につくられる尿酸は約700mgで、排泄されるのも約700mgです。排泄されるうち約500mgは腎臓から尿とともに、約200mgは腸から便とともに排泄され、微量ですが汗とともに排泄される分もあります。
さらに尿酸が過剰につくられないように働く酵素などのおかげで、体内には常に同じ量、約1,200mgの尿酸がバランスを保って蓄積されています。これを「尿酸プール」といいます。
何らかの理由によって尿酸プールのバランスが崩れ、尿酸が増えて痛風につながるのです。尿酸が増えるタイプは3つあります。
① 尿酸産生過剰型 … 尿酸が多く作られるタイプ
② 尿酸排泄低下型 … 尿酸の排泄が少なくなるタイプ
③ 混合型 … ①と②の混合タイプ
これら3つのタイプです。
以下に、それぞれのタイプと尿酸が増える理由をまとめてみます。ただ、現在すべての原因が解明されているわけではなく、まだわからないこともあるようです。
①尿酸産生過剰型
尿酸の排泄は正常に行われているのに、尿酸が多くつくられ過ぎて増えてしまうタイプです。日本人の高尿酸血症の1割がこのタイプといわれます。
原因としては次のようなものがあります。
・食品のプリン体の過剰摂取
・肥満
・過度の飲酒
・激しい筋肉運動
・強い精神的ストレス
・遺伝的要因(先天的なプリン体代謝酵素の異常など)
②尿酸排泄低下型
尿酸がつくられる量は正常ですが、排泄が少なくなり尿酸が体内に残るタイプです。日本人に最も多いタイプで、高尿酸血症の約6割がこのタイプにあたります。
原因に、
・肥満
・過度の飲酒
・激しい筋肉運動
・他の病気(動脈硬化、高血圧症、糖尿病、腎炎)による腎臓機能の低下
・薬剤の副作用
・遺伝的要因
などがあります。
③混合型
①産生過剰と②排泄低下の両方が合わさったタイプです。日本人の高尿酸血症で約3割がこのタイプで、②の排泄低下型とあわせると約9割に尿酸排泄能力の低下がある、ということになります。
④実はもうひとつある〜腎外排泄(腸管排泄)低下型
尿酸の排泄は約7割が腎臓から、約3割がほぼ腸からなされます。
②の尿酸排泄低下型は、腎臓の排泄機能が低下しておこるとされて、腸からの排泄機能には注目されませんでした。しかし最近の研究で、腸からの尿酸排泄にも低下がみられることがわかってきました。
今までの分類法で①尿酸産生過剰型や③混合型とみられていたものが、実は腸からの尿酸排泄低下が関係していたものだったり、新発見によって今までの分類では色々とあてはまらなくなるようです。
なので、上記の尿酸が増える3つの分類は今後、
① 尿酸産生過剰型 … 尿酸が多く作られるタイプ
② 腎臓排泄低下型 … 腎臓からの尿酸排泄が少なくなるタイプ
③ 腸管排泄低下型 … 腸管からの尿酸排泄が少なくなるタイプ
④ 混合型 … ①と②と③どれかとの混合タイプ
みたいな感じになるかと想像しております。
次の「尿酸増加の原因:補足」でもう少しくわしく原因を見てみたいと思います。
【参照】
『患者のための最新医学 痛風・高尿酸血症』(日高雄二 監修/高橋書店/2014年)
『ウルトラ図解 高尿酸血症・痛風』(細谷龍男 監修/法研/2015年)
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』(日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改訂委員会 編集/メディカルレビュー社/2010年)
『最新醫學別冊 診断と治療のABC 105 高尿酸血症・痛風』(寺井千尋 企画/最新医学社/2015年)〈p44-49〉高尿酸血症・痛風の原因 3.腸管排泄